Promise for empowerment
人への投資

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Interview
社会人ドクターの取得支援

社会貢献できるテーマを見極めて実行する力を鍛えられました。

開発部 材料開発G 農宗辰己 <取得学位>博士(工学)

開発部 材料開発G
農宗 辰己
<取得学位>博士(工学)

Q.農宗さんはサンユレックの「国内留学制度」を活用して、社内で初めて博士号を取得されました。おめでとうございます!お仕事との両立は大変でしたか?

そうですね。出身校である近畿大学工学部の博士課程に進学したのですが、キャンパスが広島にあり、実際に足を運ぶ期間は短かったものの通学は大変でした。また、子どもがまだ2、3歳だったので子育てのサポートもあり「三足のわらじ」を履いている状態でした。

Q.今回、なぜ博士課程に挑戦しようと思ったのですか?

10年前に修士課程で取り組んだ研究テーマを完結させたかったからです。学士課程と修士課程でもお世話になった白石浩平教授のもと、生体材料化学研究室で再生医療の研究促進に役立つバイオマテリアルの研究を行いました。

Q.それはサンユレックで取り組んでいる業務にも役立つ内容なのですか?

いえ、基本的に応用できる可能性は低いと思います。半分は僕のわがままを会社が認めてくれたということです。

Q.もう半分は?

私は現在、AIやDXを活用した新しい研究開発システムのフローの作成を担当しているのですが、近畿大学に在籍するとAI、デジタルものづくり、イノベーションなどに力を入れている広島大学の講義も受講できるんです。バイオマテリアルの研究と並行して在籍中にどんどん勉強に行くように勧められました。

広島大学デジタルものづくり教育研究センターでは現在、産業界のニーズからバックキャスティングで目標とする機能をモデル化し、産官学連携で人と環境に優しい材料技術の創出に取り組んでいらっしゃいます。在学中はその中心者である大下浄治教授をはじめ、石本孝佳教授や兼松佑典助教の講義を受けながら幅広く情報交換させて頂きました。

Q.それにしても、かなり手厚いサポートですね。

サンユレックは今、新しいことに積極的にチャレンジしていこうという気風に満ちています。その波をさらに盛り上げていくきっかけとして期待して頂いたように感じています。

Q.博士課程を通して、どのような成果を得られましたか?

自分なりのテーマを見極める思考力と、それを実行する推進力を鍛えられたと思います。自分の興味・関心を軸とするのではなく、自分の作ったものが社会にどう貢献できるのかという視点でテーマを絞り込む大切さを学びました。論文執筆においても、「他の人に着想を与えられるような内容であるか」という視点を様々な角度から教わりました。

Q.博士課程を通してあらゆる業務に活かせる普遍的な力を養うことができたということですね。しかし、バイオマテリアルの研究とAI・DXの勉強・実務は、学問分野も違いますし、同時進行で進めていて混乱しませんでしたか?

そうですね。いま思えば学生の頃から自分の所属を飛び越えて色々な研究室に顔を出し、他の人の研究内容まで覚えていくようなタイプだったので……(笑)もともと同時進行で複数分野を学ぶのが得意なのだと思います。今もAI・DXをハブにして色々な部署に顔を出し、一緒にできることを模索している最中です。

Q.素晴らしいですね。新しい変革を起こすには、タテ割りを突破する横断的なアクションが必要です。

一方で、自分の専門分野を深掘りすることも重要だと思います。「浅く広く」か「狭く深く」か、どちらか一つが正解ではなくて、自分がどちらのタイプなのか見極めることが大切ではないでしょうか。どちらのタイプもイノベーションを起こす可能性を秘めています。いずれにしても、「自分の取り組みが社会にどう貢献できるのか」という視点で、役立っている実感を得られるような行動をすること。社内でも今後そのようなサポート体制の充実が必要だと感じています。

Q.社会のニーズをキャッチするために、何か心がけていることはありますか?

あまり広く考えすぎず、身近な人の困り事をじっくりと聴くようにしています。目の前の一人が困っていることは、他の人も困っている可能性が高いので。

Q.今後、農宗さんに続いて「国内留学制度」を活用する人のために、どのようなサポートがあるとより良いと思いますか?

僕の場合は学士課程・修士課程と同じテーマだったので、最短の3年間で研究を終えることができましたが、研究実績がないところからスタートする場合は、仕事との両立はかなり高いハードルになるでしょう。ビジネスの実務では開発期間が非常に短く、その点がアカデミックな研究とのもっとも大きなギャップになっています。そうした課題を克服するためにも、今後さらに産学連携の体制を強化して、一人ひとりが中長期的な研究テーマを見つけられるような環境づくりが必要だと思います。僕も応援して頂いた一人として貢献していきたいと考えています。

Q.材料開発グループとしては今後、どのようなことに取り組んでいきますか?

開発スピードを加速させるため、引き続きAIを活用したシステムフローの構築を目指しながら、技術部とは異なる新しい技術やオリジナル原材料の開発にも取り組んでいきます。